不動産投資での出口戦略として、資産の売却を考える事もあるでしょう。
買換えによる既存不動産の売却や相続した不動産を売却することがあるかもしれません。
少しでも高く売却してくれる業者を選びたいものです。そんな時に売却の一括見積サイトを利用しようと考えられる方も多いでしょう。
一括見積サイトの仕組み
一括見積サイトの仕組みは、サイト運営者が業者から利用料を取り、サイトに見積依頼をした人を紹介するといった内容です。
依頼者が一括サイトに見積り依頼をする → 登録会社に依頼者と依頼内容が届く → 登録会社は依頼者に査定内容を連絡する
※運営会社により上記の流れは異なる場合もありますが、依頼者と不動産会社とを結びつける役割をしているのは一括見積サイトです
見積依頼者は無料で利用出来、サイト運営者は 登録している不動産会社から 初期登録料や月額利用料・利用件数による従量課金を徴収して運営しているといった形です。
一括見積サイト利用で気を付けるべき事
一括見積サイト利用は 複数の不動産屋に出向かずに査定を依頼出来る便利なサイトです。
しかしながら、いくつかの簡単な項目を入力するだけで査定がされる訳ですから あくまでも簡易査定で参考値として考えましょう。
当然のことですが、複数会社から異なる査定額が出てくるでしょう。
複数を比較して一番高い査定額を出してくれた会社に売却を頼むのが 普通の流れなのでしょう。
しかし、査定額を出してくれた会社は仲介業者であり購入者ではありません。
率直に言えば、査定額で購入する購入者がいなければ売買が成立しない、つまりは査定額は実効値とならないのです。
前述の一括見積サイトの仕組みでもある通り、登録会社は費用を使って見積り依頼者の情報を得ている訳ですので 自社で契約をしてもらい費用回収を図ります。
もともと登録会社は 売却希望者情報を得るためにお金を出して サイトに参画しているのですから 自社と契約して貰いたいと考えるのは当たり前の事です。
ただ、実際に買い手が付かないような高値を査定額として提示して 我が社に依頼頂ければこんなに高値で売れるかもしれませんと言ってくる会社もあれば、対象物件の周囲の実勢取引価格等から計算した妥当な査定額を提示してくる会社もあります。
例えるならば、分譲販売された10区画の一戸建住宅があったとします。10区画それぞれは 広さも建物もほぼ同じでした。
最近その内の2戸が中古物件として2,000万円で売りに出され 1,980万円と1,930万円で売却が決まったそうです。
一括見積サイトで査定依頼をしたところ、6社から 1,600万円、1,900万円、1,950万円、2,000万円、2,500万円、2,600万円 と査定額の連絡がありました。
同じような物件の売却価格を知っているあなたは 2,500万円や2,600万円の査定額を提示する会社をどう思うでしょうか。
私なら、出来るだけ高く売るよう頑張りますので当社にお任せくださいと「専属専任媒介契約」もしくは「専任媒介契約」を締結するよう促されても契約はしないでしょう。
2,500万円で売りに出しても おそらく売れず、このように言われるでしょう 「反響が無いので金額を下げてみましょう、似たような物件が1,930万円で実際に売れているので 値引交渉が入り50万下げるとして まずは1,980万円で売り出しましょう。」
高い査定額を提示して媒介契約を交わす。専属専任若しくは専任で媒介契約を取れば 他の業者が入って来れないので いくらで売れたとしても仲介手数料が入ってくる。そう考えて根拠の無い高い査定額を提示してくる失礼な業者も中にはいます。
2,500万円でたまたま買ってくれる人が現れるかもしれませんので、断定は致しませんが 高い金額で売り出し、反響無いから実勢価格に下げてみましょうというような発言は不誠実に映ります。それならば、最初から実勢価格は1,980万円前後ですが、2,500万円で買いたい人が現れるかもしれないので 試しに売り出してみましょうと提案して貰った方が、たぶん2,500万円では売れず、時間の無駄になるので 1,980万円で売り出しをお願いしますと言えますから。
自分で見積りしてみる
類似物件の実際の売却価額を知っていれば、提示された査定額が現実的な価格か否かは判断することも出来るでしょう。
しかし、実際に売却しようと考えている物件と酷似した条件の実勢取引情報を得られるとは限りません。
不動産は一つ一つ異なるので、それぞれ異なる価格になるのが普通です。
正確な見積もりを自分でしようとすると情報収集や計算などに時間と労力を要するし 知識も必要となります。
それを省きたいので 一括見積サイトを利用しようとしているのにと言われるかもしれません。
そんなに難しく考えずに、この位が妥当な金額というのが 何となくわかる程度で良いのです。
近くのマンションが50㎡でいくらで売れている。うちのマンションは広さは同じ位だけど駅にも近く築年数も新しいから それ以上で売れそうだ。
Aマンションは家賃8万円で賃貸されていて1,600万円で売れた、Bマンションは家賃8.5万円で賃貸されていて1,700万円で売れた。
家賃の200倍で売れているので、家賃9万円のうちのマンションは 1,800万円で売れそうだ。
ちょっと適当に感じるかもしれませんが、逆の立場であなたが購入する側として考えてみてください。
購入物件の価格が高いか安いか 妥当な金額か考えるとき 売り出し中の物件を幾つか比較して 広さや築年数、駅からの距離などの要素を加減算して判断するでしょう。
それと同じことを売却物件でもやってみれば良いだけです。
比較物件の情報はインターネットで調べても見つかりますし、査定額を提示してくれた会社に金額の算出根拠を教えてもらえば参考になる情報が得られるはずです。
自分である程度の妥当な見積額を把握しておけば、高い査定額につられて (専属)専任媒介契約を結ばされて 値下げさせられて 売らされる 事も無いでしょう。
両手(売主・買主の両方から)手数料を受領できれば 200万や300万安くしたって 仲介業者は片手に比べれば儲かります。
・片手(売主からのみ) 2,000万円で売却の場合の仲介手数料 2,000万円×3%+6万円=66万円に消費税
・両手(売主・買主両方から) 1,800万円で売却の場合の仲介手数料 1,800万円×3%+6万円=60万円の2倍 120万円に消費税
両手の方が売却額が低くても 手数料額は54万円に消費税分多くなります。
相場より低い価格設定にすれば、仲介業者は買い手を直接見つけやすくなります。
そのようにして自社の利益を優先して売主の利益を損なう会社のカモにならぬよう、自分で見積額を出すことは防御策の一つとしてとても有効な手段だと考えます。