徳川家康公が江戸に入られた頃、銀座はまだ海の中だったという方が多くいらっしゃいます。
確かに日比谷には入江があり神田山を崩した土砂で埋め立てが行われました。
そうです日比谷入江は皇居と銀座の間にありましたので、銀座は海ではありませんでした。
日本橋から新橋に至る中央通りの両側は「江戸前島」（えどまえとう）と呼ばれる半島状の土地が存在しておりました。
この「江戸前島」は鎌倉の円覚寺の所領の土地でした。一説には徳川家康が円覚寺から奪取したという話もありますが、銀座を含む江戸前島が埋立地では無いという事が言いたいので、その経緯については割愛させて頂きます。
江戸の町が埋め立てにより拡大していったことは広く知られております。
また、銀座は明治以降のモダンなイメージも強く、新しい街という印象があるのかもしれません。
また東京駅八重洲口の前にあるある「八重洲」という地名も海を連想させる一因になっているのかもしれません。
「八重洲」の由来は江戸時代に日本に漂着したオランダ船航海士の「ヤン・ヨーステン」日本名「耶揚子」（やようす）が変化したと言われています。
鍛冶橋に近い丸の内辺りにその邸宅があり「八重洲」という地名も元々は現在の丸の内の一部地域のものでした。
1929年（昭和4年）に「八重洲町」は「丸ノ内二丁目」となり廃されました。
1954年（昭和29年）に現在の「八重洲」が中央区の地名となりました。
海を連想させる「洲」を有する八重洲があることから東京駅から東側が海であったと思われてしまっていたのでしょう。そもそも人名が由来となっていると言われていることに加え、現在の八重洲のある場所は元々の八重洲町から位置が違っていることを知らずに「埋立」と揶揄する人がいたら、そっと教えてあげましょう。
築地はその名の通り土地を築いたことにより名付けられた埋立地と言ってよいでしょう。
1657年（明暦3年）の明暦の大火で消失した浅草横山町の浅草御堂の移転先として新たに埋立をして築かれた土地が「築地」だったのです。
銀座は築地の隣に位置しているために築地と同じく埋め立てされたと思われている方が多くいるのでしょう。月島や晴海は隅田川の浚渫工事出た土砂で埋め立てられたこともあり、中央区の多くが埋め立てにより江戸時代以降に出来た土地であることも事実です。
江戸時代の埋立地の多くは干潟や浅瀬を土砂や生活ごみで埋め立てたものでした。その為、固い地盤までの深さがさほどない土地も多く、埋立地だから液状化しやすいとは一概に言えないことも知った頂きたいと思います。
銀座の地盤は古い時代の砂州から出来ており、比較的引き締まった地盤で形成されています。場所によっては軟弱地盤が存在するでしょうが、前述の通り銀座は埋立地ではなく江戸前島という半島に位置した土地であり、日本初の地下鉄である銀座線を建築する際の地盤調査でも工事に耐え得ると判断されました。
ご存知の通り銀座線は、今も現役で走り続けています。
もしも銀座が埋立地で軟弱な地盤の土地であったのならば、地価日本一を長い間保持していなかったことでしょう。